地域看護学領域
地域には個々の家庭と、学校、職場、病院等の施設など、すべて人々が生活する場があります。
そこでは、赤ちゃんからお年寄りまで、健康な人から障害のある人まで、さまざまなライフサイクルの、また、さまざまな健康レベルの人々が暮らしています。
地域看護学はそれらすべての人がより健やかに暮らすことに貢献する応用性の高い看護学領域です。
地域看護学では、看護専門職の働く場として次の4つの分野を扱い、基本となる理論と技術を教授し、実践能力を養います。
市町村・都道府県・国など公的機関において地域住民全体を対象とする看護活動
企業・事業所など職域において働く人々を対象とする産業看護活動
学校において児童・生徒を対象とする学校保健活動
医療機関・訪問看護ステーションなどから在宅療養者・要介護高齢者とその家族を対象とする在宅看護活動
授業科目の構成と学習内容
2年次前期から4年次後期にわたり継続的に学ぶ構成になっています。

教育内容
地域看護学概論(1年次後期) |
すべての人がより健やかに暮らすことに貢献する地域看護学のこれまでの経緯と実績をふまえて、家庭や地域を単位とした看護活動の考え方と、公衆衛生看護活動の目的、対象、方法の全体像、保健師活動、および在宅ケアにおける看護援助の基礎的な考え方を学ぶ。 |
地域生活支援方法論Ⅰ(1年次後期) |
地域を単位とした看護の対象である、個人・家族・集団・地域の特性を理解し、様々な健康レベルの人々を支えるケアの専門職としての看護活動を理解する。 |
地域生活支援方法Ⅱ(2年次前期) |
個人・家族・集団への支援活動との関連において、地域社会で生活を営む対象の健康課題を支援するための基本的な理念と知識、人々の健康行動特性に応じた援助技術について学ぶ。 |
地域看護活動展開論(2年次前期) |
制度の仕組み・根拠法規との関連において、また、地域特性・活動場所の特性との関連において、地域看護活動の方法を理解するとともに、疫学データや保健統計等との整合性を検討して健康課題の解決に向けた事業や地域資源の活用・開発、施策化の基本的な考え方を学ぶ。 |
地域看護システム論(2年次後期) |
社会や組織のシステムの中で機能する看護について、他職種との共通・相違や、諸制度との関連を考えながら、集団・組織への支援活動の展開過程と、様々な実践の場での活動の実際を学ぶ。また、地区活動と保健事業をになう地域看護活動展開方法に必要な援助技術と施策化に必要な基本的な考え方を学ぶ。 |
地域看護管理論(2年次後期) |
人々の健康生活の向上を図るため、地域看護管理の特徴を学び、事例・事業・地区管理、組織運営・人材育成管理など、管理・運営機能について理解する。また、健康危機管理における公衆衛生看護活動の実際と役割を学ぶ。 |
地域生活支援方法演習(3年次前期) |
これまでに学習した地域看護の活動理論と関連科目で学習した内容をもとに、演習を通して、地域社会で生活を営む対象の健康課題を支援するための援助技術とそれらを駆使した保健事業の組み立てや施策化についての実践的な理解と、技術習得のための自己学習課題を明らかにすることをねらう。 |
地域看護活動展開演習Ⅰ(3年次通年) |
臨地の疫学データや保健統計等を用いた演習により、地域の健康課題に対しての公衆衛生看護活動のありかたを学ぶ。 |
地域看護学実習(3年次後期~4年次前期) |
公衆衛生の実践機関としての保健所・市町村における看護活動を素材に、保健活動の成り立ちや実際を学ぶと共に、家庭訪問や健康教育、健康相談等の体験をあわせて、地域の生活集団を単位とした看護活動の展開方法についての必要な技術の習得と、看護専門職の機能を発揮するための考察を深める。 |
看護学総合実習(4年次前期) |
地域看護活動・産業看護活動の場において、学生自らが主体的に実習を計画・実施・評価することを体験し、看護専門職としての判断能力や思考過程を深め、自らの看護観を育て学びを統合する。 |
地域看護活動展開演習Ⅱ(4年次後期) |
これまでの全ての実習経験や学びを統合し、地域看護学実習で体験した事例を中心に、個人・家族を単位とした継続支援、さらに健康課題解決にむけた保健福祉事業をさらに発展させるための計画の検討をとおして、地域看護活動の実践・評価・施策化の基礎的能力を培う。 |
研究活動
地域看護学領域では、特に地域を単位とした看護活動の方法やその構造、地域保健・福祉システムにおける看護の機能や役割についての研究に力を入れており、これまでの具体的な研究内容を表に示します。地域看護学研究・教育と実践の相互の発展、つまり研究で明らかになった実践知を看護基礎教育活動に反映すること、逆に教育活動で得られた知見を実践に反映することを目指して日々研鑚しています。
テーマ | 主な研究内容 |
(1)地域を単位とした看護活動方法やその構造 | ・地域を基盤とした看護活動方法の構造に関する研究 ・地域における育児サークルに関わる看護支援に関する研究 ・保健推進委員組織に対する市町村保健師の援助 |
(2)地域保健・福祉システムにおける看護の機能や役割 | ・行政における看護職の教育・企画調整機能に関する研究 ・市町村老人保健事業における機能訓練の意義 ・3歳児健診における保健指導 ・保健指導事業分析を通した保健所保健師による市町村新任保健師への援助 |
(3)地域看護学の教育内容と方法の練成 | ・地域看護学実習における単独家庭訪問事例の選定と指導上の留意点 ・2年次家庭訪問実習からみた地域看護学教育の導入と展開方法 ・保健師の実践研究会報告に参加した学生の学び ・看護基礎教育における家族看護学の意義 ・看護学生の職業興味、職業関心領域の変化、自己効力感との関係 |
(4)その他 | ・行政で働く保健師の継続教育 ・訪問看護実践に必要とされるフィジカルアセスメント |
地域貢献活動
これまでに行ってきた地域貢献活動としては、大分県内外の保健師を対象とする各種研修会の運営や講師としての関わり、保健所・市町村の保健事業展開に関する相談への対応、保健所・市町村・事業所等の看護職個々人の研究に関する相談への対応、共同研究、学会活動などがあげられます。
今後も、実践者である保健師・看護師と協力しながら地域看護活動の実践知を明らかにする研究活動を通して、また、地域看護学実習を中心とする教育活動を通して、地域の看護職はじめ関係者や地域住民の方々へ貢献できるように力を入れていきたいと考えています。
活動実績


大学院について
地域の保健師活動と貴方のキャリア開発を支援します!
平成10年度より開設した本修士課程看護学専攻では、地域を中心とした健康支援への創造に貢献し得る修了生を輩出してきました。
これまでに、学部卒業後すぐに進学したり、保健師としての経験を活かし働きながら学んだりと、現在も様々な院生が学んでいます。
平成19年度からのカリキュラムでは、これまでの研究分野・領域をこえた学習の展開が可能になりましたが、当面、私たちは地域看護学領域として、これまでの修士課程の教育実績を踏まえながら、さらなる発展をめざして、より実践的なカリキュラムで学習をサポートしていきます。
また近年のリカレント教育への期待に応えて、看護職者が働きながら学べる昼夜開講制度や長期履修制度を導入しました。
地域看護学領域での取り組み
教育理念の変更に基づいて、教育体制が新しくなり、ひとりひとりのキャリア開発に応じた多様なサポートが可能になりました。
本カリキュラムでは、看護研究コース(実践・管理・教育)と専門看護師コース(がん看護)を設け、選択科目も充実させています。また、研究論文の作成を中心とした「特別研究」と、実践上の課題及びその解決を中心とした「実践課題研究」が選択でき、いずれも実践活動への応用性の高い取り組みを進めます。
地域保健活動で活躍する保健師さんのさまざまなニーズに対応するため、地域看護学を中心としながらも、看護学専攻全体でバックアップするため、個別にカリキュラムを組んで学習をサポートします。
皆さんと共に学び、保健師活動の実践・管理・教育をさらに発展させるよう、さまざまな工夫をしていきたいと考えています。
*大分大学大学院医学系研究科修士課程看護学専攻 全体の概要、専門コースなどについて
地域看護学セミナー・座談会
地域看護学領域では、大学院生、修了生、教員を中心に地域看護学セミナーを実施しています。興味のある方はぜひご連絡ください。
開催日 | 隔月第3土曜日 |
場所 | 大分大学医学部看護学科棟 |
時間 | 10:00~12:00 |
内容 | 1地域看護学に関わる最新情報等の提供と共有 論文(英語)抄読 事例検討など |
問合せ先 | 大分大学医学部看護学科地域看護学 後藤・簀河原 電話&FAX:097-586-5095 Email:chiiki@oita-u.ac.jp |
保健師に関心がある学生に対して、座談会を開催しています。
開催日時 | 令和6年3月21日(木) 10:40~12:00 |
場所 | 大分大学医学部看護学科棟 |
対象 | 保健師に関心がある3年生 |
内容 | 就職試験や国家試験の学習、今後の学生生活などについて、保健師として就職予定の4年生から話を聞きました。 |


